武蔵野日記

しがない学生の日記です

ミッキーマウスの声変わり

通っていた幼稚園では、週1で「ディズニー体操」というのを朝やることになっていた。

〈僕らのクラブのリーダーは~〉というメロディーに乗せて園児たちがわいわい踊るもので、歌詞の合間にミッキーマウスやドナルドダックの元気な掛け声が聞こえた。正直それ自体は楽しくなかったが、それが「ディズニー」という文化を知った最初の体験である。

その体操の時から、ミッキーマウスの声も意識して聞くようになった。

 


「ミッキーマウス クラブハウス」 本編_第1話

 

妙に甲高くて調子も軽くて、どこかこもったような、それでいてはっきり言葉は聞き取れる力強い声。少なくとも、彼以外ではめったに聴くことはない。とにかく、一度聴いたら嫌でも忘れることのできない力がある。

当時は以上のように言語化も出来なかったけど、子ども心にミッキーの声はしっかり刻み付けられた。

人生でディズニーの楽しさを少しばかり知っていけたのは、彼の声が入口を作ってくれたからかもしれない。

 

なぜこんな回想をしているのか。

今年のディズニーハロウィンのパレード動画である。特にその2分30秒あたり。


【4K版】ディズニーハロウィン2018 スプーキー“Boo!”パレード 2018年9月10日スニーク1回目公演 ミッキーフロート

 

ミッキーの声、どうしたんだろう。

力の入れ所が違うというか、何か調子が上ずっているというか、どう聴いてもおなじみのミッキーではない。

3日前、ネットサーフィン中にこの動画にたどり着き、一瞬で違和感を覚えた僕は、なんだか自分の事のように焦った。3秒後には、「ミッキーマウス 声」でGoogle検索していた。

そしてディズニー好きな大学の同級生に思わずLINEした。

 

1991年からミッキーマウスの日本語版声優を務める青柳隆志さんが今秋、現行のTVシリーズ、及びテーマパークでのパレード出演から姿を消した。

正式な交代アナウンスは無いものの、これを書いている現在、声優の星野貴紀さんがミッキーの声を担当している。これはTVシリーズミッキーマウスロードレーサーズ』の番組クレジットより明らかだ。

 

 

青柳さんは、「大学教授」である傍ら「副業」としてミッキーの声優を担当していた、という訳分からない経歴の持ち主としても知られる*1

 

 抜擢された理由はいまだ謎だし明らかにされてもいない。ミッキーに限らず、ディズニーの吹き替えではよくあることだ(誰でも分かるのはただ、原語版のニュアンスを忠実に表現できるという基準だけだ)。

それは降板時も同様なのである。

 


「ミッキーマウス!」#09 ギョッ!

 

僕はディズニーの作品やシリーズを、人生をかけてまで愛しているとは言えないし、ミッキーに関してもふわっとした理解に留まる。

それでもあの体操で出会ってから、意図せずとも頭に染み付いた甲高い声が、生きている上でいつも周りに存在していた声が変わると、予想以上に動揺し、慌てて事情を調べ出した。ファンでもないのに勝手な反応かもしれないが、いざ声が変わった時、青柳さんのミッキーがそんな自分にさえ深く刻み込まれていたことを痛感させられた。

たとえ親しい身内でなくとも、何の準備も無く空気の一部が変わることがある、そんな感覚を、ミッキーの声を通して知るのだった。

 

同時に、1人でディズニーのメインキャラクターをいくつもこなし続ける山寺宏一さんのヤバさを痛感するのである。

*1:東京成徳大学日本伝統文化学科の教員で、専門は漢詩の朗詠や和歌の披講