マリオでラブストーリーを味わえるなんて思わなかったあの頃
有馬家では今に至るまで、テレビゲーム機というものにほとんど馴染まぬ生活を送ってきた。
家にそこまで余裕が無かったことと、子である僕と弟があまり物欲を持たなかったこと。だからPlayStationもGame BoyもXboxも、誰かの家でほんの2~3回遊んだだけである(DSなど携帯型も然り)。結果として、一緒に遊ぶ友だちはあまり居ない少年時代だった。
しかし、これだけは欲しいと思って1台だけ買ってもらったゲーム機がある。Wiiだ。
『はじめてのWii』を遊び倒すことに始まり、『Wii Fit』『Wii Sports』とソフト数は少ないものの、それなりに楽しく3~4年遊んだ(ディスクを読み込まなくなって使わなくなった)。
その中で一番やり込んだものが、『スーパーペーパーマリオ』(2007年)だった。今はWii U版が出ているらしい。
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ゲーム機を与えられたものの何が流行っているか分からず、「マリオなら間違いないだろう」と思って買ってもらったのだった。
結論から言うと面白かった。しかしそれは、期待していたアドベンチャー的な面白さではなかった。
いつも通りピーチ姫を助けに行くマリオだが、姫を襲ったのはクッパではなく、「ノワール伯爵」率いる一味だった(ザ・伯爵ズというらしい)。
彼は世界の終わりまでの出来事を記した「黒のヨゲン書」の所有者で、その予言を実行させ、自らの仲間と世界を滅ぼし、新しい世界を作ろうとする。
「ワ~ルワルワルワル」と高笑いする彼は、最初こそ彼らは純粋な悪のように見える。
しかし世界の崩壊が確実に進んでいく中、伯爵の状態がおかしくなってくる。
だんだん「ワル」と笑わなくなり、口が重くなっていく。側近ナスタシア*1との会話からにじみ出る苦しさ。そして章の合間に挟まれる、何者か分からぬ若い男女の回想。
全てが結びついた時、心の底から「あああああああ~~~~」と悶えた。予想もしていなかった展開を、存在を知らなかったツボを見事に突かれた感覚。
僕は、マリオが新しい世界でどんどん敵を倒していく、シリーズとして基本的な面白さを求めていた。初めて自分の家で遊べるマリオだから、それさえ味わえれば幸せだったはずだ。なのに。
決して叶えられぬ愛が生み出してしまった悪、それを分かりながら止められない崩壊の物語。
なんて面白さに目覚めさせてしまったのだ。
結局それ以降ほとんどマリオを遊ぶ機会がなく、今に至るまでこれが僕にとっての最高峰となっている。
正直上のCMでは僕の話した魅力がまるで分からないが、このように2D→3D世界へ移る「次元ワザ」のギミックなど、冒険的な面白さもたくさんある。
今からでも流行ってほしい。
*1:僕はこのキャラが一番好きです